Q&A
疑問解決コーナー
急速砂ろ過池が短時間で閉塞したり、ろ材が度々流出してしまいます。 急速ろ過処理のろ材を選定する場合の留意点や維持管理上の注意点について教えてください。 (Mr. Z.O, ミャンマー) |
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急速ろ過池は比較的コンパクトな施設で多量の水道水を得ることができることから、国内だけでなく海外の水道事業でも多用されています。
ろ過池の閉塞 |
ろ過池の閉塞がろ材に起因する場合には、ろ材の粒度が想定よりも小さいことが考えられます。日本ではろ材の粒度は有効径(d10)*と均等係数(d60/d10)*を用いて示すことが一般的ですが、ろ過池にろ材を投入する場合には、ろ材を検査(ふるい分け試験)して想定された粒度であることを確認することが重要です。また、粒度の検査結果が規定通りであっても、有効径以下のきわめて細かいろ材が含まれている場合、例えば最少径が0.3mmを下回るような場合には短時間での閉塞の原因になるとされています。このような細かいろ材は、ろ過池の洗浄後にろ材の表面に集まりやすいので、取り除くことが可能です1)。 ろ材の粒径とろ過速度より多量のろ過水を得る目的で複層ろ過もしくは多層ろ過が用いられています。粒径がより小さく、比重がより大きいろ材を、ろ層の下層から順に積層したもので、比重の小さいアンスラサイトを最上層に用い、その次の下層に砂を用いるのが一般的です。アンスラサイトの粒径は砂に比べて大きく設定されているので、ろ過速度を高く設定することができ、ろ過サイクル毎、即ちろ過を開始してからろ過を終了し、洗浄に移るまでの間により多量の水をろ過することができます。一方で、アンスラサイトは洗浄時にろ過池から流出しやすく、すべて流出させてしまうとろ材の表面が次層の粒径の細かいろ材(例えば砂)になってしまうため、アンスラサイトが上層にある場合より短時間で閉塞することになります。複層ろ過、多層ろ過では最上部のろ材の流出に特に注意する必要があります。ろ材の層厚、粒度を定期的に点検・確認し、予め定めた量以上のろ材が流出した場合には、ろ材を直ちに補充する体制を確立しておくとよいでしょう。ろ層の定期的な点検は単層、複層を問わず、どのタイプのろ過池でも重要です 。
写真は、元はアンスラサイトと砂が充てんされていた複層ろ過池であったものが、二つのろ材ともほとんど流出し、最下層の砂利が見えるようになってしまったろ過池です。ろ材が流出しながらもろ過池の運転が継続されているのは、上述した複数の理由が絡み合い、かつろ過池の維持管理体制が確立されていないことに起因していると推定されます。 |
ろ材の流出
参考文献 水道施設設計指針(2012年版)、pp.215-217、 |