Q&A

疑問解決コーナー

「私の所では水処理に凝集剤として粉末PACを使っています。日本ではほとんどの水道局で液体PACを使っていますね。最近我が国にも、液体PAC販売会社ができましたので、液体PACを使いたいのですが、次のことを教えてください。①仕様、耐用年数、貯蔵、利点と欠点、粉末と比較してどちらが利益をもたらすか。(M.N.カンボジア)
A-1

MWA(タイ首都圏水道公社)ではバンケン浄水場でのみ液体PACを使っています。私はバンケン浄水場での経験は、ありませんが、2006年 に原水濁度が高くなって大問題になった時に、3-4週間の短時間ですが粉末PACを使った経験があります。私の意見ですが、粉末と液体PACの利用について利点・欠点の両方がありますが、化学組成に大きな違いはありません。なぜなら同じような仕様に基づいて、選ばれているからです。

粉末PACの利点は貯蔵が楽なことです。ただ乾燥した場所に貯蔵して、できるだけ早く使うこと、通常、粉末の状態で2年間の保存期間を過ぎないこと、溶液にしてからは6カ月を過ぎないようにすることです。欠点はPAC溶液を作るための機械が必要なことと、また良好な凝集効果を得るためには、溶解して分子鎖が伸びる必要がありますが、その時間が十分とれないと効果が減少することです。使う前に調整時間として、3-4時間は必要でしょう。もし十分な調整ができない場合、凝集効果は落ちて、より多くのPAC注入が必要になり、費用がかかります。

液体PACは貯蔵タンクと計量ポンプが必要なだけで、利用は簡単なため、準備段階の労働負荷は減るでしょう。しかし、注意しなければならない重要なことは、保存期間と貯蔵タンクです。なぜならば、保存期間は1年以下です。(確かではありませんが。)そして濃度は普通30-40% です。濃度が高いほど貯蔵タンク内で沈殿しやすくなります。ですから、沈殿を防ぐために希釈すると、タンクがもっと必要で、設置する場所も必要になります。もし浄水場の用地に限りがあり、タンクを増やせない場合、10%に希釈するとPACとしての総貯蔵量は3分の1になりますので、在庫の管理がリスクになります。更に大きな問題は販売業者が十分に、継続的に液体PACを供給する能力を持っているかどうかです。

(回答者:Ms. Chaweepan Suangkiattikun(Ms. Uan)タイ首都圏水道公社)

A-2

国内での粉末PACの使用例はわかりませんが、メーカーでは販売されていることがわかりました。
http://www.taimei-chem.co.jp/product/pdf/PNF_Taipac.pdf
内外のメーカーなどに情報がありましたので、調べてみました。質問は粉末PACと比べての液状PACの利点についてですが、粉末PACも溶解してから注入すると思いますので、凝集の効果は同じと考えられます。したがって液体PAC使用の問題は、ハンドリングと保管に関することだけかもしれません。液体PACは高温で保管すると劣化したり、結晶ができたりするので、暑い地域では大量に液体で購入し、長期間保存することは問題で、粉末で購入し、溶解したPACを短期間で使用する使い方が向いているかもしれません。また、工場から搬入までに時間を要する場合、液体のほうが劣化しやすいので、地域によって粉末のほうが適していると思われます。

液体PACの結晶化は村野浄水場で経験があります。硫酸バンドからPACに切り替えて10年後くらいに、配管が閉塞するトラブルが発生しました。原因は配管の径が大きすぎて滞留時間が長いためで、配管内が真っ白の固体で詰まっていました。何年間かかかって閉塞したようですが、それ以来、定期的に配管清掃を行っています。

(回答者:林信吾 大阪広域水道企業団)

A-3

粉末PACを液体PACに変えるには設備の改善が必要になります。液体PACのAl2O3濃度は日本では10%です。そちらで入荷可能な液体PACもおそらく同じ濃度だろうと思います。そちらの現状ではおそらく30% Al2O3の粉末PACを水に溶いて10% Al2O3溶液で注入していると思います。
だとすれば、注入量は同量になり溶解タンク以下の注入設備はそのまま使用できますが、新たに液体PACの貯蔵タンク及び貯蔵タンクからサービスタンク(現状の溶解タンク)への移送ポンプの設置が必要になります。この貯蔵タンクは液体PACの運搬車から搬入できるレベルに設置することが必要です。

液体PACに変更すれば、溶解作業が不要になりますが、定期的なタンク内や注入配管の清掃は同じように必要です。なお、粉末PACと液体PACの仕様は殆ど同じで、凝集効果は変わりません。

(回答者:加賀田勝敏 元北九州市水道局)